2021.08.10更新
皮影戲で使用する影絵人形や道具は、全て「皮影(ピーイン)」と呼ばれ、演者自身の手によって、皮に美しい彫刻や彩色が施されて作られることが多い。
大きさは小さいものは約10センチ、大きくても55センチ程度で東南アジアの影絵に比べると小さめな作りになっている。また、施される模様は、女性は花、草、雲、鳳、男性は竜、虎、水、雲などが多く、善人と悪人の顔のスタイルが違うなど、ある程度様式が定められている。
皮影戲における影絵人形は、動物の皮から毛や血を除去し、皮を薄く半透明にして桐油を塗り、その上に図を描いて彫り、色を塗った後、脱水作業を行なった後に連結させることによって作られる。
中国は広大であるため、地域ごとに人形や素材の特色はあるものの、こうした制作過程はほぼ同じである。
影絵人形の材料となる動物の皮は現地のものが使われるため、地域によって異なるが、羊、ロバ、豚、牛などの皮が多く使われる。古くはロバや羊の皮が多かったが、現在は牛皮が最も広く利用されている。
皮を加工する方法は「浄皮」と「灰皮」と言う二つの方法がある。
「浄皮」は、きれいな冷たい水に2〜3日皮を浸した後、まず皮を剃り、その後肉を削り落とし、徐々に薄くなるように剃る。更に皮が薄くなるまで綺麗な水に浸して厚さを均一にした後、再び削ってきれいに透明になるまで乾かして完成となる。
「灰皮」は「軟刮」ともいい、皮を浸す際に薬剤(酸化カルシウムや硫化ナトリウム、硫酸、硫酸アンモニウムなどを調合したもの)を水に入れ、繰り返し浸す。この方法で剃った皮は、ガラスに似ていて、彫刻するのに適している。
皮影戲の影絵人形は皮によって作る人形の部位が異なり、薄くて透き通った皮は頭、胸、腹などに用いられ、厚くて透明度の低い皮は、足や他の一般的な道具に使用する。こうすることによって原料を節約するだけでなく、人形の上半身を軽くして、下半身を重くすることができ、安定感をもたせることができる。
彫刻する際は湿った布で皮を柔らかくした後、少し油を入れてより滑らかにしてから図を描く。図案は代々継承された図を見本に彫られることが多く、デザインには帛画(ハクガ、絹布に描かれた絵画)、石像画、寺院の壁画の手法などが取り入れられている。
皮に図案を彫るための彫刻工具は10本以上使われるのが一般的であり、多い場合は30本以上もある。刃物は幅の異なる尖刀、平刀、円刀、三角刀などを用い、線状、丸模様、曲がりくねった模様など、切る模様によって工具を使い分ける。
なお、皮影では人間の白い顔を表現するために、輪郭と目鼻口を残して切り抜く方法が多く用いられる。
彫るのが終わったら色を付けるが、かつてのベテラン職人は鉱植物で染料までも自ら作成して着色していた。色は主に赤、黄、青、緑、黒などの5種類を使い、種類は多くないが、濃淡をつけ、巧みに図案を表現する。
色を塗った後、適度な高温で皮内に残った水分を飛ばす脱水作業を行う。方法は様々だが、薄い板で皮影を挟んで押さえる方法、皮影を布で包んでアイロンをかける方法などがある。
脱水時の温度が適切であれば、皮は色鮮やかで透明な美しい皮影が出来上がり、さらには長期間色あせせず変形もしづらくなるため、脱水作業は重要な工程といえるだろう。
皮影の人物は、通常頭、胸、腹、両足、両腕、両肘、両手、計11の部品で形成され、自由自在に動かせるようになっており、頭をすげ替えることによって別の人形にすることもできる
人形の各関節部分は、肢体を重ね合わせたことに発生する多重影を少なくするために、車輪式になっている。車輪を通じてつなぐ点を「骨眼」と呼ぶが、骨眼が適切であれば動きがよく、逆にそうでなければ動きがおかしくなる。
骨眼を決定後、釘などで結合し、動かすための3本の竹棒をつけ、反転のための胸部の糸を付けて針金でつなげ、更に両手に各1本の糸を付けて、皮影(影絵人形)の完成となる。
李丹丹. 传统的皮影. 北方妇女儿童出版社, 2017
李跃忠. 中国皮影. 山东友谊出版社, 2013
中国皮影戏入选人类非物质文化遗产代表作名录,搜狐网.2016-01-22
皮影戏,西安文明网.2014-07-09
皮影戏的分类,中国戏剧网. 2014-07-07