影絵手帖

月岡グリムの影絵ブログ

トルコの影絵

世界の影絵

2022.03.10更新

トルコの影絵

トルコの伝統影絵芝人形劇「カラギョズ」

トルコの影絵はカラギョズ(Karagoz)という。「カラギョズ」はトルコ語で「黒い目」という意味であり,劇の主人公の名前でもある。カラギョズは14世紀後半以降、オスマン帝国全体に広まったといわれる。
起源については、モンゴル帝国の拡大と共に中国の影絵が伝わったという説や他のアジア地域から伝わったという説など諸説あり定かではないが、17世紀にはほぼ現在の形になっている。

カラギョズは、結婚式や祭りの時など祝時の夜に上演されることが多く、他のアジアの影絵劇同様、スクリーンの後ろで操る人形の影を光源によって映し出し、音楽、吟詠、歌と共に上演される。伝統的な舞台は模様がプリントされたカーテンとスクリーンで覆われた3面のブースで構成されるのが一般的ある。

カラギョズの人形と上演

カラギョズの影絵人形は35〜40センチほどの大きさで、ラクダ、ロバ、馬、水牛、子牛の皮などを加工して透明にし、植物性顔料によって彩色する。人形は複数の関節を持っており、踊り、ジェスチャーを行うことができる。人間の人形だけではなく、動物や鳥、家や船、木などの背景の他、ドラゴンなどもある。

人形の形態や制作手法は中国の影絵、皮影戲に似ているが、皮にラクダの皮が用いられる点やトルコらしい民族衣装デザインが影絵芝居の地域性を表していて興味深い。

カラギョズの上演は、人形遣いがランプに火をつけたときに始まる。伝統的な公演では、人形遣い以外に歌手や数人のオーケストラがいる。公演ではジョークを交えた軽妙な会話を行い、時には叫んだり騒音を出したりしながら、お馴染みのストーリーが進められるが、状況に応じてストーリーを即興で変えたり、即興の会話なども行う。

カラギョズのストーリー

カラギョズは典型的なトルコ人をデフォルメした「カラギョズ」と「ハジバト」の二人を主人公として進められる。

カラギョズは無法な町人であり、貧しく教育を受けていないが、狡猾さと機知によって不遇な状況から抜け出そうとする。一方のハジバトは教育を受けた知識層であり、知ったかぶりとして描かれている。この二人がちぐはぐな会話をしながら、当時の社会的および政治的問題について軽妙に風刺するような内容になっている。

また、二人以外にもさまざまな階級や登場人物を表すキャラクターが登場する。「アルバニアの獣」「ベリゲカス」など理由もなくカラギョズを打ち負かす「剣の人々」は支配層を表し、聖職者、イスラム教徒やキリスト教徒、外交官などを表す「ペンの人々」として「フレネミー」が登場する。カラギョズ自身は街の職人を表す「鎌と槌の人々」である。

娯楽の少なかった時代、カラギョズは多くの民衆に支持され、劇場や喫茶店、裕福な家などの他、スルタン(イスラム界の君主)の前でも上演され、オスマン帝国の拡大と共にギリシャ、エジプト、北アフリカなどにも広がっていった。

参考文献

karagoz.net. Traditional Turkish Shadow Theatre Karagoz. karagoz.net, 2022-3-10