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中国の影絵6~皮影戲の流派(三)華北地方

世界の影絵

2021.11.10更新

中国の影絵6~皮影戲の流派(三)華北地方

冀南皮影戲(河北)

冀南皮影戲は河北省の影絵芝居で、2千年前の西漢で誕生し、清代に盛んになったといわれる。陝西や唐山の影絵芝居と比較すると、古くからの伝統様式をそのまま多く維持しているのが特徴だ。

冀南皮影戲の起源は北京宮廷の影絵芝居と言われ、それが冀南に伝わって河北南部に分布し、邯鄲市肥郷県を中心とした広範な地域に影響を及ぼしたとされる。南皮影戲の発祥地となった肥郷では皮影戲を「牛皮影」、「皮子戯」、「突皮戯」、「片目戯」と呼んでいる。

冀南皮影戲の影絵人形は比較的シンプルで牛革によって作られる。基本的に台本はなく、ユーモラスな会話と共に即興的に演じられる。通常7〜8人で公演を行い、伴奏には二胡、三弦、大鼓、各種ドラなどが用いられる。

演目のレパートリーも豊富で、「西遊記」「封神演義」「三国志演義」「隋唐演義」「楊将軍」「包拯事件」をはじめ、多くのストーリーが演じられた。

山西皮影

山西には2400年の歴史を持つ山西孝義皮影、様々な伝統的な図案がよく見られる山西晋南皮影、清代から始まった清徐皮影戲など、多くの皮影戲の流派が見られる。

山西の皮影戲は、地理的にも近い陝西影絵芝居と似ており、影絵人形で使われる線は破線、実線のほか、虚実線、絵線、暗線が使用される。

虚実線は華麗に見えるため、貴族の建築、置物、衣装などによく使われるが、陝西世襲豪族と少女の恋愛を描いた伝統的な演目である「拾玉鐲」でもそうした山西皮影の特徴を見ることができる。

北京西城皮影

北京皮影の代表ともいえるのが北京西派皮影戲で、北京皮影西城派とも呼ばれる。北京地区の都市影絵芝居は、遼金時代に始まったといわれ、北宋時代にはすでに成熟していた。

北京西派は、山陝皮影、河南江浙皮影、滦州東北皮影などの特長を継承しながら数百年の発展と進歩を経て北京皮影を形成したと言われる。精緻で変化に富む表現と透視効果を重視していることが主な特色である。

参考文献

李丹丹. 传统的皮影. 北方妇女儿童出版社, 2017
李跃忠. 中国皮影. 山东友谊出版社, 2013
中国皮影戏入选人类非物质文化遗产代表作名录,搜狐网.2016-01-22
皮影戏,西安文明网.2014-07-09
皮影戏的分类,中国戏剧网. 2014-07-07