影絵手帖

月岡グリムの影絵ブログ

タイの伝統影絵芝居、ナンヤイとナンタルン

世界の影絵

2022.01.10更新

タイの伝統影絵芝居、ナンヤイとナンタルン

ナンヤイ(Nang yai)

タイにおける影絵劇ではナンヤイとナンタルンが有名だ。
特にナンヤイはタイ全土的に伝わる影絵劇で、「大きな影絵人形」という意味であるナンヤイという名前からも伝わるように、等身大の大きな人形を使用することが特徴である。

ナンヤイの影絵人形は水牛や牛の皮に色をつけて作られ、重さは3〜4kg、大きいものは5〜7kgにもなる。
写真をてわかるとおり、人形は非常に大きく団扇のような形をしているものが多い。デザインは非常に様式化されており、演者はその大きな影絵人形を2本または1本の棒で操る。

ナンヤイで語られるエピソードはインドの叙事詩ラーマーヤナ(タイではラーマキエンと呼ばれる)が取り入れられており、ピファットなどのタイの伝統楽器によって、各エピソードに合わせた音楽が演奏される。

ナンヤイの影絵公演は芝生や村のオープンスペースなどで行われ、横幅約16メートル、高さ約6メートルにもなる大きな白い布のスクリーンがステージに張られる。現在は電灯がよく使われているが、伝統的には画面の後ろで焚き火が行われ、その灯りによって人形の影が映し出される。

ナンヤイもナンタルンも15世紀の初め頃に始まったと言われ、1458年にはすにでナンヤイに関する記録が見つかっている。

ナンヤイ

ナンタルン(Nang talung)

ナンタルンがタイ全土で知られる一方、タイ南部で有名な伝統的な影絵劇がナンタルンだ。

ナンヤイとも共通するナンというのは「革」という意味だが、その「ナン」と南部の都市「パッタル」が一緒になったのが語源と言われ、マレーシアの影絵劇・ワヤンゲデク(WAYANG KULIT GEDEK)にも影響を与えたと言われている

ナンタルンは等身大の人形を利用するナンヤイと打って変わって、用いられる人形は小さく、15〜50センチ程度のサイズで、人形と語り部、音楽などで構成され、歌は「Wa bot」と呼ばれる方言で歌われる。

タイ南部で長く人気を保ってきた伝統影絵劇ナンタルンだが、複雑な形式であることから徐々に衰退しており、伝統文化として残すための保存運動が起こっている。

ナンヤイ

参考文献

Unima Internationale. “Thailand”. World Encyclopedia of Puppetry Arts, 2022-1-10
Lian Lim, Siew. “The Role of Shadow Puppetry in the Development of Phatthalung Province, Thailand”. Southeast Asia Club Conference, Northern Illinois University, 2013