影絵手帖

月岡グリムの影絵ブログ

影絵とは

影絵の知識

2021.06.01更新

影絵とは

影絵とは

影絵とは、紙や動物の皮などを切ったり彫ったりして、人間や動物、風景などを作り、光源から光を当てることで、創作表現をおこなったもの。人形などが動く「影絵芝居・影絵人形劇(シャドウプレイ)」のほか、手や体で影を作る「手影絵」、紙を切って光を当てた「影絵(シルエットアート)」などがある。

影絵における表現は、スクリーンに投影された影を利用するのが一般的だが、スクリーンの裏に人形等を密着させて表に画を描いたもの、スクリーンを使わないが切った紙に光を当てて創作表現を行ったものなど、光と切った紙などを利用した創作表現も広義の影絵に含む。

影絵で作られるキャラクターや背景などには、着色するタイプとそうでないタイプがある。着色する場合、各国に伝わる伝統的な影絵芝居などでは、透明にした皮に着色料を使って色をつけることが多く、現代影絵では色セロファン、カラーフィルターなどを使うことが多い。

猫

アジアの影絵

各国の伝統影絵芝居には、大衆娯楽的要素が強い影絵、宗教的要素が強い影絵がある。前者には中国の皮影戲、トルコのカラギョズなどがあり、後者にはインドネシアのワヤン・クリ、インドの影絵芝居などがある。伝統影絵芝居は、戯曲や歌などと共に、後ろから操った人形の影をスクリーンに投影して、表舞台にいる観客に演目を披露するのが一般的であり、お祝いや宗教的な催事の際に催されるケースが多い。

様式としては、必ずしもそうでない場合もあるが、使用される人形は、大衆的要素が強い場合は色をつけることが多く、宗教要素が強い場合は単色になる傾向にある。これは影絵の影には神秘性があると捉えられているためと考えられる。
また、皮影戲やワヤン・クリのように手や腕が稼働するタイプ、タイのように団扇のようになっていて基本的に手や腕は動かないタイプなどがある。

世界の有名な伝統影絵芝居としては、中国の皮影戲、インドネシアのワヤン・クリがよく知られるが、その他にもインド、タイ、マレーシア、カンボジア、トルコなどで影絵芝居がよく知られている。

皮影

ワヤン・クリ

ヨーロッパの影絵

前項のとおり、伝統影絵芝居の歴史的中心地は、中国、東南アジア、インド半島のアジア地域であり、ヨーロッパの影絵は中国の皮影戲がモンゴル帝国の拡大時に伝わった説、インド半島から伝わった説などがあるが、確実な証拠はない。

いずれにしても伝統影絵芝居の歴史がアジアを中心としていたことは異論がないところであるが、17世紀のフランス、イタリア、イギリス、ドイツでは影絵人形劇が人気があったことが伝わっている。現代も伝統様式を残しているアジアの伝統影絵芝居とは異なり、ヨーロッパの影絵は複雑な模様は施さず、人間や動物のシルエットを利用した比較的なシンプルなデザインであるのが特徴であり、様式美よりもストーリーに重点を置いてる傾向にある。

ヨーロッパではドイツのロッテ・ライニガーなどの世界的影絵アニメ作家が誕生しており、伝統文化としてではなく影絵アニメとして進化し、アニメーションの世界にも大きな影響を与えている。独自の様式美を持った伝統文化とまではなってなかったゆえに、時代に合わせた変化が容易だった故の変革と考えると興味深い。

関連リンク:世界の影絵

LotteReiniger
引用:Lotte Reiniger/Primrose Productions

日本の影絵

日本における伝統影絵は主に手や体を利用した手影絵の部類であり、江戸時代には、手影絵の他、走馬灯、切り抜きの影絵、写し絵なども存在した。

歴史資料としては、1810年に手影絵のパロディを記した「和蘭影絵(十返舎一九/於都里伎・作、 喜多川月麿・画)』などが残されており、江戸時代の庶民に影絵が親しまれていたことがわかる。

戦後は1946年に『木馬座(人形劇場ジュヌ・パントル)』、1952年に『かかし座』などの影絵劇団も誕生している。

手影絵